愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

「……わたくし、一刻も早く犯人を捕まえたかったんです。ハルト様との平穏無事な結婚生活のために」


 言えば、ハルト様はムッとした表情で頬をほんのりと赤らめます。繋いだ手のひらにギュッと力がこもりました。……よかった。少しだけ落ち着いてくださったみたいです。


「ハルトは猪突猛進型だからな。ザマスコッチのことを伝えたら証拠が不十分な状態でも突撃しかねないと思った」

「うっ……」


 ごめんなさい。こればかりはわたくしもプレヤさんに同感です。もちろん、そんなハルト様の融通のきかないところ、わたくしは大好きなんですけどね。


「それで、俺には内緒でクラルテにザマスコッチと手紙のやりとりをさせてたんですか? やつをおびき寄せるために?」

「はい残念、不正解。おまえ、さっきクラルテが言ってたことをちゃんと聞いてなかったな?」

「そんな、正直あのときはザマスコッチへの怒りでいっぱいいっぱいで、詳細まで聞きとれませんでしたよ」

「まあそうだろうな。大変だったんだぞ、クラルテ。ハルトを抑え込むのに僕たちがどれほど苦労したか、君にも見せてやりたかったよ」


 プレヤさんはそう言ってケラケラと笑っていらっしゃいます。わたくしはハルト様にギュッと抱きつきました。