(え?)


 そちら側には商店もなければ、住宅もほとんどない。郊外に向かうルートだ。
 先程クラルテは『仕事しかしていない』とハッキリ口にしたが、魔術師団の仕事でこちらに向かう理由が思い当たらない。一体、なにがあるというのだろう?


「クラル――」

「クラルテさん!」


 そのとき、聞き慣れない男の声が聞こえてきた。クラルテの視線の先を凝視し思わず叫びそうになる。


(ザマスコッチ……!)


 間違いない。あのナルシスト顔には見覚えがある。

 本当にクラルテとつながっていたのか……! そう思うにつれ、腸が煮えくり返ってくる。


 本当は今すぐ二人の前に躍り出て、あの男をめちゃめちゃにしてやりたかった。クラルテは俺のものだと叫び、思いきり抱きしめて、俺だけを見てほしいと懇願したい――そう強く思ったものの、ほんの少しだけ残った冷静な自分が『まあ待て』とささやきかけてくる。