「クラルテ、プレヤさんからなにか聞いていないか?」

「えっ……? なにがですか?」


 朝食の席のこと。俺はクラルテに疑問を投げかけてみる。

 クラルテは平然を装っていたが、ほんの一瞬――少しだけ視線を泳がせた。


(間違いない)


 クラルテはプレヤさんの企みを知っている。知っていて、知らんぷりをするように指令を受けているんだ。……いや、むしろ『なにかあると匂わせてこい』と言われている感じもする。


「……クラルテは今日、仕事に行くんだよな?」

「そうですよ。昨日はお休みでしたし。もちろん、職場に直行いたしますよ?」


 あっ、これは直行しないやつだ。隠したいのか、隠したくないのか……クラルテの本心は後者なんだろうな。ついて来いと言われているようにしか聞こえない。


「そうか……。なあ、俺に言えないようなことをしていないか?」

「いえいえ! わたくしは仕事しかしておりませんけれども!」


 勢いよくそう否定され、俺は思わず唇を尖らせた。


(仕事しかしておりませんけれども、ねぇ)


 つまり、裏を返せば『仕事でなにかをしている』ということだ。しかし、すべてを教えてくれる気はないらしい。――じれったいな、と俺はため息をついた。