人間っていうのは案外脆いものなのだと最近になって思い知った。大事なものがあるならなおさら。失って平気なものは、そもそも興味がなかったからなのだと――そう知ったのは本当に最近のことだ。


(一体、クラルテの机のどこに手紙が転送されているんだろう?)


 今日はクラルテは非番で、俺が仕事の日。俺は訓練の休憩時間を使って、クラルテの仕事場に来ていた。

 いつ見てもきちんと片付けられた机の上。書類も小物も、なにひとつ乗っていない。息をつく暇もないほど忙しいのに……彼女の性格と誠実な仕事ぶりがうかがえる。


「……おまえさ、クラルテになかなか会えないからってデスクに来てまで存在感を求めるって末期だぞ?」

「自覚はあります。放っておいてください」


 揶揄してきたのはプレヤさんだ。知らない間についてきていたらしい。俺はムッとしつつ、小さく息をついた。

 クラルテの存在を求めていたのも事実だが、手紙の真相を確かめられたら……というのが本当のところだ。しかし、プレヤさんにそんなことを言えば「女々しい」「最低」「ありえない」と笑われるので黙っておく。パッと見た限り、収穫もなさそうだ。