(温かい――)


 まどろみのなか、俺は腕に力を込める。ふわりと漂う甘い香りに思わず笑みが漏れた。


「クラルテ……」


 目を開けて、真っ先に飛び込んでくる愛しい人の顔。いつもは見下される側なのに、今朝は俺が見下ろす側だ。


(いいな……こういうの。幸せだ)


 ダメだ……口元がニヤけてしまう。

 クラルテの寝顔は驚くほどに可愛かった。
 化粧を落とした素肌は透明感に溢れていてついつい吸い寄せられてしまうし、眉毛もまつ毛も美しく、ついつい隅々まで観察したくなってしまう。薔薇色の頬に鮮やかな唇は言うまでもなく、俺の心を惹きつけてやまない。触れたくて触れたくて――けれど、そんなことをすれば起こしてしまうだろう。穏やかな睡眠を邪魔したくない。昨晩は相当無茶をさせたし――――と思ったところで自主規制。熱を逃すためにため息をつく。