愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

「そんなの当たり前ですよ! わたくし、ハルト様のことが大好きですもの! あんなふうに言われたら嫌ですもの! 傷つきますもの! 本当はもっと……もっと、色々言ってやりたかったんです!」


 ダメです……こらえようと思っていたのに、涙がこぼれてきてしまいました。女の泣き顔ってのはおそろしくブサイクなものですし、当然ハルト様に見せたくなんてありません。彼にはいつも笑顔のわたくしを見ていてほしいのに……。


「クラルテ」


 ハルト様がわたくしに口づけします。よしよしってたくさん頭を撫でながら。合間に愛を囁かれて。涙は引っ込みましたが、完全に酸欠状態です! プハッと息を吸い込んで、わたくしは落ち着きを取り戻します。もうなにがあっても動じないぞと、そう意気込んだときでした。


「今夜は一緒に眠りたい――――って言ったらどうする?」

「ぇえ!?」


 想定外! こればっかりは想定外ですよハルト様!