二人して馬車に乗り込んだすぐあと、ハルト様はわたくしのことをきつく抱きしめてきました。コルセットをしているので、正直ちょっとだけ苦しいです! ……が、これは彼の強い愛情ですから! わたくしも必死に抱き返しました。


「クラルテ……」


 頬を撫でられ、あまりの気持ちよさに目をつぶります。すると、すぐに唇に柔らかな感触が重なりました。チュ、チュと小さなリップ音が狭い馬車に響いて、頭が沸騰しそうです。


「ハルト様……」


 キスの合間に互いの名前を呼び合います。いいですね、こういうの! ずっとずっと憧れてました。

 …………いえ、本当はこんな浮かれムードじゃないんです。すごくしっとりした雰囲気なんですけど、こういうノリじゃないと本当にたえられないんですよ。恥ずかしすぎて! 逃げ出したくなっちゃうんです(馬車なんで逃げ場なんてないんですけどね)!

 そのくせ、ハルト様に求められてる感じがして、すっごくすっごく嬉しいですし。
 へんです。矛盾だらけです。わかってますけど、自分じゃどうしようもないんですよ。主導権を握られちゃってるんで。握り返すしか逃れる道はないってことなのでしょう。