愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

「先程からとてもお美しいなぁと、声をかけてみたいと思ってみていたのです」

「まあ……先程から見ていらっしゃったのなら、わたくしが別の男性と終始一緒にいたことをご存知なのでは?」


 ニコリと微笑みつつ、わたくしは食事を続けます。男性は少しだけ目を丸くしてから、ニヤリと口の端を上げました。


「……見かけによらず気の強いご令嬢なのですね」

「はい、よく言われます。ふわふわして見えるのに案外小賢しく、したたかだって。個人的には最高の褒め言葉だと思ってますけど」


 視線を合わせないままそう返せば、男性はハハッと笑いました。


「私の名前はセオドア・ザマスコッチです――――と言ったら、少しは興味を示してくれるかな?」

「……!」


 なんと。
 そうでしたか……この人はハルト様の元婚約者であるロザリンデさんの夫のようです。わたくしにとってはいわば敵。二人はハルト様の心を深く傷つけたのですから。