愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

 さて、夜会会場をぐるりと見回します。友人たちは現在ダンスの真っ最中。ハルト様のお兄様たちはすでにお帰りになったようです。ぱっと見合流できそうなグループも見当たらないので、わたくしは食事を再開することにしました。


(しかし、やっぱりハルト様と一緒のほうが美味しく感じられますね……)


 味気ないというか、面白みがないというか。いえ、わたくしの人生は食事に限らず常にそんな感じではありますけれども。


「失礼、レディー」


 そのとき、視界にひとりの男性が飛び込んできました。まっすぐにわたくしを見つめているので、わたくしに話しかけているようです。


(今どきレディーって……)


 ぷふっと笑いそうになるのをこらえつつ、わたくしは「なんでしょう?」と答えました。