「違う違う。こんなときにごめんなんだけど、ハルトと少し仕事の話がしたくて」

「仕事? でも……」


 ハルト様がちらりとわたくしを見ました。

 プレヤさんがわざわざ断りを入れている時点で、ここではできないお話なのでしょう。『ハルトと』と指定しているあたり、わたくしは一緒じゃないほうがいいんだろうなぁってこともわかります。

 しかし、どうやらハルト様は、わたくしを会場にひとりで残したくないようです。


「大丈夫ですよ! さっきあんなに挨拶して回ってダンスもして『婚約者』アピールしましたし、単身参加の夜会にも慣れてますから」


 わたくしはそう言ってドンと胸を叩きます。

 あっ、念のために申し上げるとこれは本当です。わたくしのパートナーはハルト様しかありえないので、男性を伴っての夜会には出席したことないんですよ。しかも、友人たちにはパートナーがいるもんだから、一人になるのは必然的といいましょうか。自然の流れだったのですよね。


「でもなぁ……」


 じとっとした瞳でハルト様が見つめてきます。