誰にでも触れられたくない黒歴史というものは存在します。いわゆる若気の至りというものです。
 しかもそれは、本人が忘れた頃に突然やってきて、えもいわれぬ気持ちに陥れてしまうのです。


(どうしましょう……いえ、どうしようもないんですけれども! 一体どうするのがいいものか…………)


 これはわたくしがハルト様と結婚する以上、避けて通れぬ道です。元はと言えば自分がまいた種ですし、責任を持って回収せねばなりません。


(それにしたって、なんであのとき、あんなことをしてしまったのでしょう……)


 思い出すだけで、恥ずかしさのあまり顔が赤くなってしまいます。願わくば五年前のわたくしをぶん殴ってやりたい――過去に戻れる魔法があるなら、わたくしは喜んで使うでしょう。
 本人に対してならまだしも、よりによってハルト様のお兄様がたにあんなことを言ってしまうなんて……いえ、当時のわたくしは焦っていたんです。焦っていたんですけれども、それでも。