クラルテの無事が確認できないまま、消火活動はそれから約一時間続いた。地獄のような――拷問のような一時間だ。
 ようやく鎮火したタイミングを見計らい、俺は急いでその場をあとにする。


(このあと残火処理や実況見分がはじまるが、今日の俺は非番だ。ここで抜けたところで、咎めるものはいないだろう)


 仮に叱られたとしても、そんなことはどうでもいい! 今すぐクラルテの無事を確認したかった。


「クラルテ! どこだ? どこにいる!?」


 叫びながら、俺は必死に火災現場の周辺を走り回る。
 と、馴染みの隊員を見つけ、俺は思わず足を止めた。クラルテと同じ班の男性だ。


「君、クラルテを見なかったか?」

「クラルテさん……? え? 彼女は今日お休みのはずですけど……ここに来ていたんですか?」

「――見ていないのか?」


 心臓がドクンドクンと鳴り響く。別の班の隊員に聞いても、こたえはみな同じだった。