「旦那様……!」

「クラルテ、現場まで転移できるか?」

「はい!」


 クラルテがすぐに魔法陣を敷く。次の瞬間、俺たちは火災現場の近くに転移していた。

 平和な街に、人々の悲鳴が木霊する。火災が起きたのは王都で一番大きな商会のようだった。外から見るに五階建ての建物で、かなり広い。


(先程の音……なかで爆発が起きたのか)


 入り口からは内部の様子はうかがえない。ただ、もくもくと上がる黒煙が、ただごとではないことを物語っている。


「旦那様、わたくしは魔術師団に連絡を」

「頼む。俺は状況を確認し次第、人命救助、消火活動をはじめる」


 火災は時間との勝負だ。発生してすぐに駆けつけられたのは運が良かったとしか言いようがない。
 けれど、建物の大きさと煙の様子を鑑みて、俺とクラルテの二人だけでなんとかできるようなものではないはずだ。