「おはようございます、旦那様」

「おはよう。クラルテ、その……今朝の君はすごく可愛い。いや、いつも可愛いんだが! 本当に、びっくりするぐらい、可愛いよ」


 もっと気の利いた言葉をかけたいのに、感動のあまり語彙力がどこかにすっ飛んでしまった。
 おまけに、気づけばクラルテの頭に手を伸ばしかけていて、俺はハッと息をのんだ。


(せっかく綺麗にセットしてくれたのだ)


 出かける前から乱しては、きっとクラルテも嫌だろう。
 けれど、クラルテは俺が引っ込めた手のひらの下に頭を滑り込ませ「えへへ」と唇をほころばせる。


「……撫でてくれないんですか?」

「なっ……!」


 こんなことを言われて平気でいられるはずがない。食い気味によしよし、と髪を撫でれば、彼女はとても嬉しそうに笑った。