きっちり綺麗に結い上げると、旦那様の理性が働きそうだなぁって。手が動かなくなるような気がしましたので……少しぐらい乱しても問題ない感じの(けれど気合が入っているとわかる)髪型がいいなぁと。たくさん撫でていただきたい、撫でたくなるような本能に訴えかける可愛い髪型にしたいと選びました。


「それにしても、いつ見ても、クラルテ様の髪の毛は綺麗ですわね」

「もちろん! 時間もお金もしっかりかけて、めちゃくちゃケアしてますからね! 植物由来の香油とか、はちみつ入りのシャンプーとか! 自分にあうものがどれか色々と試してきましたし、髪の毛を綺麗にしてくれる食品を食べて内側からもケアしてますし!」

「努力家ですね……」

「すべては旦那様の愛情を勝ち取るためですから! 当然ですよ!」


 正直、わたくしには努力をしているという感覚はありません。全部自分が心からしたいと思うことですし、ものすごく楽しんでやっています。努力といえば努力なのかもしれませんが、まったくもって苦には感じません。


「届くといいですね」


 侍女たちがそう言って微笑みます。すごく温かく、勇気づけられる――そんな笑顔です。


「うん。しっかり届けてきます」


 決意を胸に、鏡の前の自分ともう一度向き合います。よし! と大きくうなずいてから、わたくしは旦那様の部屋に向かうべく、立ち上がるのでした。