それは新年度を目前に控えた、うららかな春のある日のことだった。


「こんにちは、旦那様!」


 越してきたばかりの新居の前に、大きな荷物を背負ったうら若き女性が立っている。
 栗色の柔らかそうな髪の毛、鮮やかな紫色の大きな瞳、身長は俺より四十センチほど低いだろうか? 小柄でか細く、可憐な容姿をしている。化粧っ気がなく、雰囲気は清涼感に満ちていて、純粋培養のお嬢様、といった印象だ。


「君は……」

「クラルテと申します。旦那様のお嫁さんになるため馳せ参じました! これからよろしくお願いいたします!」


 ペコリと大きく頭を下げ、クラルテが俺の顔を覗き込んだ。


「君がクラルテ……?」

「はい、旦那様!」


 クラルテはそう言ってニコニコと嬉しそうに微笑んでいる。俺は思わずドギマギしてしまった。