人生は虹色〜兄が僕に残した言葉〜

「はは、真ん中の兄ちゃんは全然、似てないよ!焼きそば焼いてるって言ってたけど……どこだろ〜」



焼きそばの屋台に着いては、

航兄ちゃんを探すように、

覗き込んで見ていた。



「ねぇ?もしかして、あの人?」



夏実は焼きそばを焼く男性を発見し、

確認するかのように訊いてきた。



「あ!そうそう。あれが航兄ちゃん!似てないでしょ?」



「うん。確かに似てない……けどカッコいい人なんだね」



「え!やっぱり夏実もそう思う?!」



「え?」



「お前の兄ちゃん、カッコいいよなってよく言われるからさ」



航兄ちゃんは僕と全然似てなくて、厳つい顔立ちをしていた。



そのせいもあってか、初見はどうしても怖がられる。



でも、話すと優しくて面白い人だった。



それにカッコいいと評判で、学生時代はモテてたんだとか。



「そうなんだぁ」



僕たちが見ていたことに気づくように、

航兄ちゃんは笑顔で僕を呼んだ。



「おっ仁!なんだ、来てたのか?!こっちにこいよ!」



僕たちは引き寄せられように、焼きそばを焼く航兄ちゃんのもとへ歩み寄った。



航兄ちゃんも僕の隣にいる夏実が気になるのだろう。



遠慮なしに僕に訊いてきた。



「うん?ひょっとして彼女か?仁にしちゃあ可愛いじゃねえか」



赤くなった頬に、たくさんの空いたビールを見て、僕は呆れていた。



こんなにお酒飲んでから……

ホント酒臭い。




「はぁ……付き合ってないから!だだの友達だって」



「はぁ、なに〜?!……あっ!じゃあ、これからかぁ?いいね〜ぃ」



「あ〜もぉ!兄ちゃん酔すぎだって!」



僕が面倒くさそうに相手をしていると、

夏実は恐る恐る横に入ってきて、

航兄ちゃんに挨拶し始める。



「あのぉ〜夏実って言います。はじめまして……」



「おっ、夏実ちゃんね。たくさん食べていきんちゃいよ!」



「あっはい」



「おっそうだ……仁、小遣いやろぉ!」



気分が良くなったのか。

航兄ちゃんは僕に千円札、

二枚と焼きそば、二つを渡してきた。



「え!いいの?こんなに!」



「えぇからえぇから!その代わり、夏実ちゃんに好きなもん買ってやれよ!」



「あっ……ありがとうございます」



夏実はその光景を目の当たりにして、

反射的に頭を下げる。



「少ないけどな!まぁ、ゆっくりしてき〜」



「はい」



僕は航兄ちゃんから貰った二千円を握りしめて、夏実と一緒に航兄ちゃんから離れて行った。