「出来ないからって、諦めたくはないです!」

 番組の中でインタビューされて、天野先輩は強い口調でそう答えていた。

『ダンスグループのボーカルを決めるオーディション』だから、ボーカルとしてどうなのか?を重視するけれど、ダンスの審査もあって。

 最終審査に残った人たちは、小さな時からダンスをしている人ばかりだった。天野先輩はダンス未経験だったから周りよりも出来ないのが目立っていた。しかも最終に残ったメンバーの中では最年少。

 みんなが休憩している時間もひとりだけ課題曲のダンスを練習して頑張っていて。

 私がもし天野先輩の立場なら、すぐにあきらめちゃうかもしれない。先輩は上手く踊れなくて悔し涙を流しながらもずっとずっと歌いながら踊って練習していた。

 その姿を見ていると、他の人たちもテレビに映っているのに、天野先輩しか見えなくなっていて。いつの間にか受かれーって本気で応援して、願っていた。

 そしてなんと、合格した。

 天野先輩とは違うイメージをした雰囲気の人とふたりだけ合格していた。天野先輩が白ならもうひとりの人は黒が似合いそうな人。

 その時は心の底から「やったー!」って、自分が何かを達成した時のような。それよりも気持ちが高ぶっていたかもしれない。

 天野先輩は合格してからレッスンやあちこちのイベント周りをして1年後、正式にメジャーデビューした。

 そんな感じで、先輩を画面越しに知ってからだんだんと気になってきて。

 先輩が笑ったらうれしいし、悲しんだら私も悲しくなる。
 先輩のおかげで毎日が楽しくなった。

 もう先輩は、私の心の中で必要な人。