「そのキスって『世界一好きな人にしたいやつ』ですか?」

『世界一好きになった人の髪の毛にキスをしたい』 それは、僕の写真集に載せた言葉。
 ちなみに今回写真集に載せた言葉は、全部自分の言葉で嘘はひとつもない。もちろん、あのちゃんにあとから書いたメッセージも含めて。

「そうだよ」

 僕はうなずいた。

「あ、どうしたらいんだろう。つまり、先輩は私を……」
「はい、世界一好きです」

 あのちゃんは顔を真っ赤にし、両手で口をおさえて、目をぱっちりと開いていた。

「でも、私は先輩のファンだしありえない……」

 あのちゃんはぶつぶつと独り言を言っている。

「本当です。いきなりで驚いたでしょ? ごめんね。告白したけどすぐにどうにかなりたいわけではなくて、まずはこれからも一緒に会ってくれたりしてくれれば、うれしいです」
「……分かりました」

 間があいたけれども、あのちゃんは涙目になりながらうなずいてくれた。

 いきなり世間にも「恋人が出来ました」とか、公表はやっぱり難しくて。お仕事関係の人もファンの子たちも乱れちゃうから。何よりもファンの子の気持ちを誰よりも知っているあのちゃんが公表しようとしたらダメって言ってきそう。

 ひとまず、あのちゃんがプライベートでも一緒にいてくれる様子でほっとした。あのちゃんをずっとずっと大切にして、いつかタイミングを見つけたら「大切な恋人です」と世間に言いたい。理想は芸能界の大先輩が堂々と「長年一緒にいる、俺の愛する幼なじみです」って紹介するイメージ。