それから毎日、お昼ご飯の時間は屋上に行くようになった。
 もうここに来てから1週間ぐらいたつ。

 いつもはひとりで食べていて、それでも別に平気だったけれど。先輩と一緒に食べるようになって、ドキドキするけれどお昼ご飯の時間が楽しくなってきた。

 そして毎回甘い卵焼きをひとくちサイズにして私の口に入れてくれる。気のせいか、だんだんと卵焼きの甘さが増してきているような気もする。
 
 今の風景はまるで、膨大な量の応募者をくぐり抜けた『抽選で1名様にプレゼント』をゲットしたような感覚で、この屋上で先輩と過ごす時間は、自分にとって世界で1番貴重な時間。

「ここ、いつも誰も来なくて。静かで良いですね」

 なんとかギリギリ自分から話しかけれるようにもなってきた。

「でしょ? 景色もいいし。前は同じ学年の『おまもり隊』の子たちもついて来ようとしてたんだけどね。ひとりの時間がほしいって言ったら理解してくれて。僕のファンはみんな優しくていい子だなぁ」

 ファン想いな天野先輩らしい言葉。ファンが優しいのは、きっと天野先輩が優しいから。

 おまもり隊。正式名は『星彩高校、おとくんお守り隊』。

 天野先輩のファンである3年生のお姉様を中心に結成された組織。活動内容は、天野先輩が心地よい学校生活をおくれるように見守る。そして何か事件が起きた場合は全力でお守りする。正式な人数は分からないけれども、人数は日々増えているらしい。

 とばされた先輩のクッションとなった私。全く私は関わっていない組織だけど、もしもこの組織に関わっていたらMVPがもらえたかもしれない。
 天野先輩をお守りするのはそれほど私たちにとって価値がある。