私と廉は公園のベンチに並んで座っていた。

緑豊かで広いこの公園では、小さな子供を連れた家族達が、ボールを投げたりかけっこをして遊んでいる。

空は雲一つない水色に染まり、風が心地よかった。

さっきから廉は無言で、ただ木々の葉が揺れるのをじっとみつめている。

沈黙に耐えられなくなった私は、思わず廉に話しかけた。

「廉・・・ねえ、廉ったら。何とか言ってよ。」

「・・・・・・。」

「廉・・・怒ってる?」

廉は大きくため息をつくと、やっと私の方を向き、呆れたように言った。

「怒ってねーよ。」

「ほんと?」

「ああ。ただ自分が情けないだけ。俺のせいで皐月に無茶させた。」

「それは私が勝手に動いただけで、廉はなにも悪くないよ。」

「皐月・・・お願いがある。」

廉が真剣な目で私をみつめた。

「このこと、母さんには黙っていて欲しい。」

「・・・・・・。」

「父さんは母さんと俺を裏切っていた。そしてそれを償わないまま一人で消えてしまった。でも母さんは何も知らずに父さんとの思い出を大切に守っている。それを壊したくない。」

「廉・・・。」

廉だって父親に裏切られて辛かったはずなのに・・・。

「うん。わかった。冬実さんには絶対に言わない。星が好きな冬実さんの思い出を私も廉と一緒に守りたい。」

「ありがとう。皐月。」

そう言って廉が頭を下げた。