先ほどまでいたファミレスとは打って変わり、モダンでモノトーンのインテリアが洒落ているカフェのテーブルで私と女性は向かい合って座った。

女性は軽く手を挙げてカフェスタッフを呼び、すばやくアイスコーヒーを頼んだ。

「あなたは?」

そう促され、私もアイスミルクティ―を頼む。

注文した品が届くまでの沈黙の時間が長く感じられ、やっと目の前に飲み物が届くと思わず大きく息を吐き出した。

女性はストローでアイスコーヒーを一口飲むと、やっと言葉を発した。

「とりあえず自己紹介しない?名前も知らない人間同士じゃ腹を割って話せないでしょ?」

女性は余裕たっぷりにそう言って微笑んだ。

「私は神原奈美子。あなたの名前は?」

「私は・・・一宮皐月といいます。よろしくお願いします。」

そう奈美子さんに頭を下げながら、こんな状況なのに低姿勢に出てしまう優等生な自分が嫌になる。

「で?さっきの話は本当なの?あなたの父親と五代冬実が結婚したって・・・。」

「はい。事実婚なので苗字はそのままですが。」

「私を納得させる証拠になるもの、あるかしら?」

それでもまだ疑いの目を向ける奈美子さんに、私はスマホの写真フォルダに保存しているパパと冬実さん、廉、そして私の4人で写した画像を見せた。

パパは冬実さんの肩を抱き、冬実さんはパパに寄り添い、柔らかい笑みを浮かべている。

奈美子さんはその画像を、ただ氷のような眼差しでじっとみつめていた。

「あの・・・信じて頂けたでしょうか。」

奈美子さんは私の問いに答えずに、プッと息を噴き出したかと思うと、大きな声で笑い出した。

「あーはははっ!」

その目には涙がにじんでいる。

しばらく笑い続けた奈美子さんは、その後真顔になりハンカチで目元を拭いた。

「何にも知らずにあの女、幸せになったんだ。可哀想な廉君。」

廉が可哀想・・・?

あの女って冬実さんのことだよね。

「あの・・・奈美子さんは冬実さんのお友達、ですか?」

だとしたら廉は母親の友人とお付き合いしているの?

でもそれはあまりにも不自然に思えた。

すると奈美子さんは私を鋭い目で睨み、吐き捨てた。

「ふん。お友達?笑わせないでよ。私はあの女が大嫌いなの。どうせならあの女が逝けば良かったのよ。どうして誠一郎さんが・・・」

そう語尾を弱めた奈美子さんは泣きそうな顔をした。