「しかし皐月の通う、美しの丘学園に編入出来たなんて、廉君はそうとう優秀なんだな。あの学園は結構偏差値の高い学園なんだよ?」

パパの言葉に五代君は何でもないことのように言った。

「別に。大して難しい試験でもなかったので。」

「・・・・・・。」

どうやら五代君はイケメンでスポーツが出来るだけではなく、成績も優秀らしい。

私は五代君の顔を改めてみつめた。

少し吊り上がった奥二重のクールな瞳、そのくせ笑うと甘く爽やかな少年の顔になる。

新しい家族との初めての顔合わせだというのに、白いTシャツの上にチェックの半袖シャツを羽織り、ジーパンというラフな格好。

スタイル抜群の身体にそのファッションは良く似合っていて、おろしたての紺色のワンピースを着た自分の格式ばった服が馬鹿らしくなる。

・・・まあ、ルックスだけ見れば女子が騒ぐのも分からないでもないけど。

しかし正直、女子人気の高い五代君は、私にとって一番関わり合いたくない人間だ。

この人と一緒にいると、なにかと注目の的になってしまう。

私は出来るだけ学校生活を静かに穏やかに過ごしたい。

でも・・・これみよがしに五代君と距離を置いていたらパパと冬実さんが心配する。

なんとか、バランスを取って上手くやっていかなきゃ。

パパと冬実さんが席を外すと、五代君が私を見てにやりと笑った。

「なんか、思ってたのと違う・・・って顔してるけど?」

「そ、そんなことないわよ。」

「俺のこと、どう聞いてた?」

「弟だって・・・年下だって言うから、わたしてっきり・・・」

「もっと幼いガキだと思ってた?」

私は小さく頷いた。

「でも年下なのはホントだぜ?あんたは5月生まれ、俺は8月生まれ。3か月違いの皐月お義姉さん。これからヨロシク。」

「よしてよ。お義姉さんなんてあなたに言われたくない。皐月、でいい。」

「じゃ、俺も廉で。家族なのに五代君じゃよそよそしいだろ?」

廉が差し出した右手を見て、私も仕方なく右手を差し出し、義姉弟としての握手を交わした。

「でも、このこと知っていたなら、もっと早くに教えてくれればよかったのに。」

「サプライズの方が面白いかと思ってさ。案の定、俺を見た時の皐月の唖然とした顔・・・あははっ!忘れらんねーな。」

「・・・爽やかそうに見えるのに、けっこう性格悪いのね。」

「あれ?今頃気付いた?」

「・・・・・・。」

私が睨んでも、廉はどこ吹く風といった様子。

こんなことでもなかったら、多分一生交わらなかった相手が義弟になる。

なんだかとても複雑な気持ちだった。