急いで振り返ると、キッチンに立っていた和真が、じっと高音を響かせるIHコンロを見つめていた。
「小鳥遊さん!?え!?」
ソファーに持っていた和真の上着と、自分のカバンを置いて慌てて駆け寄ると、音の出所であるコンロへ視線を向ける。
そこには、ドリップポットを手に持ったまま、ボタンを押し続ける和真の姿が…。
「えっと…何を…?」
「…お湯を沸かそうと思っているのですが…何度押しても電源が入らない、という状況です」
「なるほど…とりあえず、危ないので手を離してください」
あおいの言葉にすぐに従った和真。
ボタンから手を離した瞬間に、鳴り続けていた音は止んだ。
ホッとするあおいは、和真に近寄った。
「システムキッチンでも、鍋を置いてから押さないと危ないですよ」
「そうなんですね…初めて扱ったので、知りませんでした。他に何か気をつけることはありますか?」
思いのほか、素直に聞いてくれる和真に、感心しそうになったが引っかかる発言に驚くあおい。
「…初めて…?IHが…?」
「はい。今まではボタンを押すだけの電気ポットでしたから…まだここには届いていないようです」
あおいはとても混乱した…。
キッチンが初めてという人が、あおいにとって初めてだったからだ。
少しの沈黙を経て、あおいは我慢できずに吹き出してしまった。
「ふっ…んん゛…ごめんなさい、私でよければやりますよ」
「…お願いします。あ、見ていてもいいですか?」
「はい…どうぞ…」
笑いそうになるところを、咳払いでごまかす。
見学を決めた和真は、すぐにドリップポットを置いて、自分が立っていた場所をあおいへ譲った。
大人に見られるという不思議な感覚になりながらも、和真が置いたポットを持ち上げたあおいは、その軽さに驚いて蓋を開ける。
中に何も入っていないことに、唖然としたのだ。
「…小鳥遊さん…なんでお水が入ってないんでしょうか…」
「え?沸くのではないんですか?」
(これが…お金持ちとの感覚の違い…!!)
本当に知らない様子で、小首を傾げる和真。
あおいはポットへ水道水を入れていく。
「お水を入れないと出てきませんよ。空焚きって言って、火事の原因になって危ないんです」
「なるほど。わかりました」
子どもに教えるように、丁寧に説明するあおいの言葉に和真はコクリと頷いた。
ほんの少しの親近感を覚えるあおいに、和真は、あ…と気づくと引き出しからパックを出す。
「すみません、コーヒーをお願いします」
「はい」
渡されるスティックコーヒーを受け取ると、2本であることに気づいた。
ふと、用意してあるカップを見ると、2つ…。
(私の分…?)
機械的な返事ばかりをする和真の印象が、少し変わった。
「小鳥遊さん!?え!?」
ソファーに持っていた和真の上着と、自分のカバンを置いて慌てて駆け寄ると、音の出所であるコンロへ視線を向ける。
そこには、ドリップポットを手に持ったまま、ボタンを押し続ける和真の姿が…。
「えっと…何を…?」
「…お湯を沸かそうと思っているのですが…何度押しても電源が入らない、という状況です」
「なるほど…とりあえず、危ないので手を離してください」
あおいの言葉にすぐに従った和真。
ボタンから手を離した瞬間に、鳴り続けていた音は止んだ。
ホッとするあおいは、和真に近寄った。
「システムキッチンでも、鍋を置いてから押さないと危ないですよ」
「そうなんですね…初めて扱ったので、知りませんでした。他に何か気をつけることはありますか?」
思いのほか、素直に聞いてくれる和真に、感心しそうになったが引っかかる発言に驚くあおい。
「…初めて…?IHが…?」
「はい。今まではボタンを押すだけの電気ポットでしたから…まだここには届いていないようです」
あおいはとても混乱した…。
キッチンが初めてという人が、あおいにとって初めてだったからだ。
少しの沈黙を経て、あおいは我慢できずに吹き出してしまった。
「ふっ…んん゛…ごめんなさい、私でよければやりますよ」
「…お願いします。あ、見ていてもいいですか?」
「はい…どうぞ…」
笑いそうになるところを、咳払いでごまかす。
見学を決めた和真は、すぐにドリップポットを置いて、自分が立っていた場所をあおいへ譲った。
大人に見られるという不思議な感覚になりながらも、和真が置いたポットを持ち上げたあおいは、その軽さに驚いて蓋を開ける。
中に何も入っていないことに、唖然としたのだ。
「…小鳥遊さん…なんでお水が入ってないんでしょうか…」
「え?沸くのではないんですか?」
(これが…お金持ちとの感覚の違い…!!)
本当に知らない様子で、小首を傾げる和真。
あおいはポットへ水道水を入れていく。
「お水を入れないと出てきませんよ。空焚きって言って、火事の原因になって危ないんです」
「なるほど。わかりました」
子どもに教えるように、丁寧に説明するあおいの言葉に和真はコクリと頷いた。
ほんの少しの親近感を覚えるあおいに、和真は、あ…と気づくと引き出しからパックを出す。
「すみません、コーヒーをお願いします」
「はい」
渡されるスティックコーヒーを受け取ると、2本であることに気づいた。
ふと、用意してあるカップを見ると、2つ…。
(私の分…?)
機械的な返事ばかりをする和真の印象が、少し変わった。