「いい加減、泣きやめよ。まるで、俺が泣かせてるみたいだ」

「……っ……ごめんって、ほんとに」

ガタンゴトンと揺れる電車の中。

私はさっきから涙が止まらない。

私たちの他に乗客が数人乗っているが、静かな車内に嗚咽を我慢するだけで精一杯。

隣にいるのは、クラスメイトの橋村(はしむら)大輝(だいき)くん。

170センチ以上ある身長に、こんがりと焼けた肌。

小学校の時から野球一筋で、高2の今も野球部に所属している。

そして、夏に3年生たちの引退試合を終えた今はキャプテンとしてチームをまとめているみたいだ。

私はテニス部をやっていて、今日は2人とも部活帰り。

窓の景色は、茜色に染まった空。

「それよりさ、あいつと別れたらどうなんだよ?」

「……無理だよ。諦めきれないんだもん」

“あの人”のことを思うと、こんなに泣いてしまうのがなによりの証拠。

その人とは、付き合ってもうすぐ1年を迎える私の彼氏で、私に最も影響を与えた人物。

高校入学したての頃、部活見学でテニス部を見た際、隣のコートで練習していた男子テニス部の結斗(ゆいと)先輩に一目惚れして、テニス部に入ったきっかけだ。

結斗先輩に認められたくてテニス初心者な私は積極的に朝練に取り掛かり、自主練も毎日おこなった。

そして、その年の秋、努力の成果もあって結斗先輩と無事付き合えることになった。