「おはようございます。麗香(れいか)先生。」
「おはようございます。今日もよろしくね。」
「おはようございまーす。」
いたるところから麗香に向けて朝の挨拶が交わされた。
「ねぇねぇ、麗香先生今日も綺麗ね。ツヤツヤしてる。」
「昨夜も(とおる)先生とシタんじゃないの。」
「キャッ!」
「イャーダー!」
― まったく女の子はそういう話が好きよね。聞こえてますよ・・・
― 看護婦さ~ん! ここは職場ですよー。
― あーあ、・・・まったくそんなことないのに・・・
ー ムカツク!
麗香は皆に笑顔を振りまきながら診察室に消えた。

ここは、泉田(いずみだ)総合病院。祖父が立ち上げた町の中堅病院で、近くに病院が無いのでとにかく患者が後を絶たない。父が2年前に急逝し、今は夫である亨がこの病院の院長。夫とは4年前に結婚した。父が生きているとき亨は私にとにかく優しかった。ハンサムで人なつっこい亨は、いつのまにか私の彼氏になり、父に取り入ってこの泉田家に入って来た。そう、亨の目的はこの病院・・・。しかし、父が急逝すると態度が一変した。私のことなどいないのも同然といった感じ。当然ながら、夫婦の関係は・・・既にない。
それでも私はこの地域の人と病院の為と何事もないかのように振舞い、毎日病院に通う。
― どれたけ私が溜まっているか・・・心も身体も・・・
― 叫びたい! 
― あーーーーー