午後2時15分。僕は1人芝生の上に寝転び揺れれる桜を見上げている。真っ青な空にうかぶうす桃色のはなばな。僕と桜は正反対だ。
温かな木漏れ日が優しく僕を包み込む。
あぁ。このまま死ねたらいいのに…
僕は目を閉じた。



脳腫瘍…僕が?
母さんは、肩を震わせて泣いている。
最近のひどい頭痛の原因はどうやら病気のせいだったらしい。
余命約1年と告げられた。信じられない。涙も出てこない。その日は1人であの丘の上の桜をただ茫然と眺めていた。
まだ16年しかこの世を生きていないのに…
その日から僕の闘病生活は始まった。
生きる希望などなかった。まぁ、もともと無気力に生きてきた。目標や将来の夢、やりたいことやらも特になかった。
このままただ生きていくだけならこれでよかったのかもしれない。
この退屈な日々の楽しみは、あの丘の桜を見に行くことだった。
外出の許可が降りたある日。僕は人生で最後になるかもしれない春を楽しむため、桜を写真に収めることにした。
1人が僕は大好きだった。そんな僕にとってあの丘の桜は誰もみにこないから、密かな穴場だった。
なのに…なんで人がいるんだよ。
真っ白な肌に真っ白なワンピース。長い黒髪。やたら顔の整った少女が歌っている。
桜以外に初めて美しいと思った。
いつのまにか僕は彼女を写真の中に収めていた。
「ちょっと。なにとってんの?きゃー変態!」
「え、ちょ、ちょっと待って。違います誤解です。」
「なにが誤解よ。勝手に写真撮ってなにしてんの?」
「本当にすみません。なんか美しくて、勝手に体が動いちゃったって言うか…」
「きんもっ!もー最悪。帰る!」
「あ、ちょっちょっと待って」
彼女は