いつか永遠の眠りにつく日まで

「ここからは、あまり外を見るな。」



相変わらず馬車の窓に付けられたカーテンの隙間から外を見ていた私に、レオ様が言う。



「なぜですか。」

「この辺りはまだデネブリスに統合されて間もない。旧デネブリスへの反乱分子も多くいる。」

「……旧、デネブリス…?」

「元々デネブリスだった地域をそう呼んでいます。逆に戦争により吸収、統合された周辺諸国を始めとした地域を新デネブリスと呼んでいるのです。」



レオ様に変わって、ジャスティアが説明をしてくれた。

私たちルチェルナの人間からしてみれば統合された段階でデネブリスの一部だけれど、そこに暮らす人からしてみたらそうもいかないということか。


(それもそうよね…。)


もちろん統治の仕方だって変わるだろうし、不満も募るのだろう。

何より、戦争によって家族を失った人だっているはずだ。



「だから、なるべく外から中が見えないようにしてくれ。」

「…分かったわ。」



巻き込まれる面倒事は、1つで充分だ。



「ところで、どこへ向かっているの?」



少なくとももうデネブリス国内へと入ったのだから、遅かれ早かれ目的地に着くだろう。

そこまで考えて、ハッとした。


私はまだ、レオ様が何者なのか知らない。

デネブリスの人間で、身分のある人間ということしか知らなかったことに今更気が付いた。



「デネブリス城だ。」

「……まさか…。」

「…あなたという人は。」



またしても、ジャスティアに呆れた声を出されてしまった。