「俺は人柱になると決めたこと、後悔してねぇんだ。」
私がやっと落ち着いてきた頃、皇憐は不意に言った。
顔を上げて皇憐の顔を見ると、皇憐は優しく笑って続けた。
「桜琳、お前を一生守れる。国ももちろん大事だ。でもそれ以上に、桜琳を守れることが俺には大事なんだ。」
「皇憐…。」
「しかも、お前の子孫までずっと守れる。」
皇憐が封印されることになった今、私は結局秀明と結婚することになった。皇后になる。国を治める。子どもを儲け、国の繁栄を願う。
あぁ、なんて残酷なんだろう。
秀明が嫌いなわけじゃない。
けれど皇憐との未来をずっと思い描いてきた私にとって、まさに青天の霹靂。皇憐以外の人との間に子を成せだなんて。相手が秀明でよかったと心の底から思う。
「そんな未来の話、私はいらない…。」
またボロボロと涙を零すと、皇憐は私の頭を抱え込むようにして抱き締めた。
「俺は、未来永劫『桜琳だけ』のものだ。」
『私の子孫をずっと守る』。それは、そういう意味か。私を永遠に、想い続けると…。
「皇憐っ…、皇憐…。」
ただ名前を呼んでその背にしがみついた。口付けを交わすと、私の涙でしょっぱかった。
私は皇憐から少し離れると、上に着ていた衣を脱いだ。
「お願い…。最後に、私を皇憐のものにして…。」
そう言うと、皇憐は身を固くした。けれどすぐに優しく笑って私に口付けた。
「それだけは、出来ない。」
「どうしてっ…!」
「もしお前が孕んだらどうする。」
「むしろ、皇憐との子が欲しいのよっ…!」
泣きながらそう言う私の両手を取って、皇憐は目線を合わせた。
「その子はどうなる? 不義の子、私生児、どんな扱いを受けるか分かったもんじゃねぇ。」
「でも、皇憐の子よ? 皇憐を知る人なら、そんな邪険になんてしない…!」
「子だけじゃない、お前の扱いだって不貞を働いた女になるんだぞ?」
「構わない…! 秀明だってきっと理解してくれるわ…!」
皇憐は苦笑すると、私を抱き締め直して再び口付けた。
「もし、子が産まれたとして。俺は、その子の成長を側で見守ることすら叶わない。お前は、俺をそんな父親にしたいのか…?」
悲しげに笑ってそう言われて息を飲んだ。
俯いて額を皇憐にくっつけて、またボタボタと涙を零す。自分勝手な自分が嫌になる。
「そうね。もし皇憐との子が産まれたら、私っ…、あなたと一緒に成長を側で見守りたいわ。」
泣いたまま微笑むと、皇憐は優しく微笑んだ。
「ごめんな、桜琳。」
私はただ首を横に振った。
「我が儘を、言ってもいい?」
「ん?」
「抱いてくれなくていい。皇憐の体温や匂いを忘れないよう、肌に触れさせて欲しいの…。」
皇憐は上に着ていた衣を脱ぐと、地面に敷いた。帯をしたまま上半身だけ寝巻きを脱ぐと、先程の衣の上に私を押し倒し、覆い被さるように抱き締めた。
「桜琳…愛してる。」
「私も愛してるわ、皇憐…。」
皇憐を近くに感じる。体温、鼓動、匂い。私の名前を呼ぶ声。息遣い。
何もかも忘れない。忘れないよう、この身に刻みつける。
私たちはそうして桜の中、一晩中ただ抱き合って名前を呼び合い、口付けを交わして、そして愛を囁き合った。
皇憐は、最後まで泣かなかった。
私がやっと落ち着いてきた頃、皇憐は不意に言った。
顔を上げて皇憐の顔を見ると、皇憐は優しく笑って続けた。
「桜琳、お前を一生守れる。国ももちろん大事だ。でもそれ以上に、桜琳を守れることが俺には大事なんだ。」
「皇憐…。」
「しかも、お前の子孫までずっと守れる。」
皇憐が封印されることになった今、私は結局秀明と結婚することになった。皇后になる。国を治める。子どもを儲け、国の繁栄を願う。
あぁ、なんて残酷なんだろう。
秀明が嫌いなわけじゃない。
けれど皇憐との未来をずっと思い描いてきた私にとって、まさに青天の霹靂。皇憐以外の人との間に子を成せだなんて。相手が秀明でよかったと心の底から思う。
「そんな未来の話、私はいらない…。」
またボロボロと涙を零すと、皇憐は私の頭を抱え込むようにして抱き締めた。
「俺は、未来永劫『桜琳だけ』のものだ。」
『私の子孫をずっと守る』。それは、そういう意味か。私を永遠に、想い続けると…。
「皇憐っ…、皇憐…。」
ただ名前を呼んでその背にしがみついた。口付けを交わすと、私の涙でしょっぱかった。
私は皇憐から少し離れると、上に着ていた衣を脱いだ。
「お願い…。最後に、私を皇憐のものにして…。」
そう言うと、皇憐は身を固くした。けれどすぐに優しく笑って私に口付けた。
「それだけは、出来ない。」
「どうしてっ…!」
「もしお前が孕んだらどうする。」
「むしろ、皇憐との子が欲しいのよっ…!」
泣きながらそう言う私の両手を取って、皇憐は目線を合わせた。
「その子はどうなる? 不義の子、私生児、どんな扱いを受けるか分かったもんじゃねぇ。」
「でも、皇憐の子よ? 皇憐を知る人なら、そんな邪険になんてしない…!」
「子だけじゃない、お前の扱いだって不貞を働いた女になるんだぞ?」
「構わない…! 秀明だってきっと理解してくれるわ…!」
皇憐は苦笑すると、私を抱き締め直して再び口付けた。
「もし、子が産まれたとして。俺は、その子の成長を側で見守ることすら叶わない。お前は、俺をそんな父親にしたいのか…?」
悲しげに笑ってそう言われて息を飲んだ。
俯いて額を皇憐にくっつけて、またボタボタと涙を零す。自分勝手な自分が嫌になる。
「そうね。もし皇憐との子が産まれたら、私っ…、あなたと一緒に成長を側で見守りたいわ。」
泣いたまま微笑むと、皇憐は優しく微笑んだ。
「ごめんな、桜琳。」
私はただ首を横に振った。
「我が儘を、言ってもいい?」
「ん?」
「抱いてくれなくていい。皇憐の体温や匂いを忘れないよう、肌に触れさせて欲しいの…。」
皇憐は上に着ていた衣を脱ぐと、地面に敷いた。帯をしたまま上半身だけ寝巻きを脱ぐと、先程の衣の上に私を押し倒し、覆い被さるように抱き締めた。
「桜琳…愛してる。」
「私も愛してるわ、皇憐…。」
皇憐を近くに感じる。体温、鼓動、匂い。私の名前を呼ぶ声。息遣い。
何もかも忘れない。忘れないよう、この身に刻みつける。
私たちはそうして桜の中、一晩中ただ抱き合って名前を呼び合い、口付けを交わして、そして愛を囁き合った。
皇憐は、最後まで泣かなかった。



