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宮殿を出てから1日が経った。北の地方に向かっていたときとは違い、昨日は紅葉が色鮮やかで目が楽しかったが、道を進むにつれ、枯れ葉がだらけになってしまった。おまけに登り坂で私の脚はパンパンだ。
「ねぇ、皇憐。」
「ん?」
「宮殿を出てからずっと考えてたんだけど、どうして皆そんなに秀明を信頼してるの?」
そこまでの信頼に足る何かがある人なんだろうか。私からすれば全く見知らぬ赤の他人なので、いきなり信頼しろと言われてもやはり無理な話だったので、直球で訊いてみた。
「ん〜。ぶっちゃけ、全員が全員、秀明をすげぇ信頼してたわけじゃねぇと思うぞ。特に最初はな。」
「そうなの?」
「例えば。空が今の皇帝はすげぇ信頼できる奴だって言ったらどう思う?」
「ずっと側で見てきたんだろうし、空が言うなら信頼できるのかなって思う。」
「そう、まさにそれだ。秀明にも同じような心理が働いてる部分が最初はあった。でも一緒に居るうちに、こいつ信頼できるなって気付いて、皆信頼するようになった。」
皇憐はそう言って笑った。なるほど、しっかりと時間をかけて築かれた信頼というわけか。そして皇憐の笑顔が、皇憐がいかに秀明を信頼しているかを物語っていた。
…当たり前かもしれないが、この感じだと残念ながら私は当分秀明を心からは信頼できそうにない。すぐに信頼できるような何かがあればと思ったのだが…。
…でも、皇憐は信頼できる。今はそれで良しとしよう。
「んじゃ、秀明を信頼できねぇお前に問題だ。普通1000年も間が開けばどこかでその信頼にも綻びが生じるはずだが、それが起こらなかった。なんでだと思う?」
道端の石を蹴り飛ばしながら、皇憐は言った。
日本で1000年前といえば、平安時代…? 紫式部…? ダメだ、特定の人物に対する信頼どころか、その人が実在したのかすら怪しくなるようなレベルだ。信頼が綻ぶどころの話じゃない。
眉間に皺を寄せて首を横に振った私を見て、皇憐は得意気に言った。
「正解は、俺や鬼たちが生きているからだ。あと、封印もな。」
「あぁ、なるほど!」
「語り継ぐだけじゃ、どんな賢帝だってこんなに強固な信頼は得られない。生き証人である俺らがいるからこその信頼だ。」
「まぁ俺は封印されてたけど」と付け足したのを聞いて、つい笑ってしまった。1番貢献したのは鬼たちじゃん。
1000年の信頼…か。なんだかいいな、かっこいい。つい笑みがこぼれてしまう。
その次の瞬間、皇憐が形相を変えて叫んだ。
「結!!」
「…え…?」
ボンヤリと考え事をしていて、反応が遅れてしまった。気付けば私の首には太い腕が回されていた。
何事かと周囲を見回すと、賊と思しき男たちに囲まれていた。そこそこの大人数だ。皇憐の手にかかればあっという間だろうけど…。
そんな風に余裕をぶっこいていた私は、私を捕まえている男に鼻と口を布で覆われて、あっという間に意識を失ってしまった。
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宮殿を出てから1日が経った。北の地方に向かっていたときとは違い、昨日は紅葉が色鮮やかで目が楽しかったが、道を進むにつれ、枯れ葉がだらけになってしまった。おまけに登り坂で私の脚はパンパンだ。
「ねぇ、皇憐。」
「ん?」
「宮殿を出てからずっと考えてたんだけど、どうして皆そんなに秀明を信頼してるの?」
そこまでの信頼に足る何かがある人なんだろうか。私からすれば全く見知らぬ赤の他人なので、いきなり信頼しろと言われてもやはり無理な話だったので、直球で訊いてみた。
「ん〜。ぶっちゃけ、全員が全員、秀明をすげぇ信頼してたわけじゃねぇと思うぞ。特に最初はな。」
「そうなの?」
「例えば。空が今の皇帝はすげぇ信頼できる奴だって言ったらどう思う?」
「ずっと側で見てきたんだろうし、空が言うなら信頼できるのかなって思う。」
「そう、まさにそれだ。秀明にも同じような心理が働いてる部分が最初はあった。でも一緒に居るうちに、こいつ信頼できるなって気付いて、皆信頼するようになった。」
皇憐はそう言って笑った。なるほど、しっかりと時間をかけて築かれた信頼というわけか。そして皇憐の笑顔が、皇憐がいかに秀明を信頼しているかを物語っていた。
…当たり前かもしれないが、この感じだと残念ながら私は当分秀明を心からは信頼できそうにない。すぐに信頼できるような何かがあればと思ったのだが…。
…でも、皇憐は信頼できる。今はそれで良しとしよう。
「んじゃ、秀明を信頼できねぇお前に問題だ。普通1000年も間が開けばどこかでその信頼にも綻びが生じるはずだが、それが起こらなかった。なんでだと思う?」
道端の石を蹴り飛ばしながら、皇憐は言った。
日本で1000年前といえば、平安時代…? 紫式部…? ダメだ、特定の人物に対する信頼どころか、その人が実在したのかすら怪しくなるようなレベルだ。信頼が綻ぶどころの話じゃない。
眉間に皺を寄せて首を横に振った私を見て、皇憐は得意気に言った。
「正解は、俺や鬼たちが生きているからだ。あと、封印もな。」
「あぁ、なるほど!」
「語り継ぐだけじゃ、どんな賢帝だってこんなに強固な信頼は得られない。生き証人である俺らがいるからこその信頼だ。」
「まぁ俺は封印されてたけど」と付け足したのを聞いて、つい笑ってしまった。1番貢献したのは鬼たちじゃん。
1000年の信頼…か。なんだかいいな、かっこいい。つい笑みがこぼれてしまう。
その次の瞬間、皇憐が形相を変えて叫んだ。
「結!!」
「…え…?」
ボンヤリと考え事をしていて、反応が遅れてしまった。気付けば私の首には太い腕が回されていた。
何事かと周囲を見回すと、賊と思しき男たちに囲まれていた。そこそこの大人数だ。皇憐の手にかかればあっという間だろうけど…。
そんな風に余裕をぶっこいていた私は、私を捕まえている男に鼻と口を布で覆われて、あっという間に意識を失ってしまった。



