翌日、1日休みを挟んで出発しようという皇憐の提案で、私は自室でのんびりゴロゴロしていた。朝食後、すでに手持ち無沙汰だ。
宮殿探検をしたいような気もするけれど、どこが入っていい場所なのかも分からないし、昨日気が付いたが、宮中は恐ろしく広い。1人で彷徨いたら絶対に戻って来れなくなる。
(そうだ、皇憐を誘えばいいのでは…!)
そう思いついてから、いやいやと首を振った。そもそも皇憐がどこに居るかも分からないんだった。ガックリと肩を落としたその時、部屋の扉が叩かれた。
「はい!」
姿勢を正して返事をすると、扉を開けて入って来たのは空だった。
「空! どうしたの?」
「結…暇…?」
「うん、すっごく暇! 何しようか考えてたところなの。」
そう言うと、空は顔を輝かせた。
「じゃあ、遊ぼ…。」
「いいの? お仕事は?」
見かけに騙されそうになるが、1000年以上生きている鬼である空は、宮廷内できちんとした職に就いている。
「お休み…。」
「そうなの? じゃあ遊ぼう〜!」
私は遊び相手をゲットして一気にテンションが上がった。空も嬉しそうに少し笑った。
「何かしたいことある?」
そう問うと、空は首を傾げた。
「じゃあ、宮殿を案内して欲しいな! 私1人だと迷子になっちゃいそうで…。」
「うん…。」
空は任せなさいという調子で顔の前で両手の拳を握った。何とも頼もしい限りだ。
それから空の案内で宮殿探検に出発した。
城門や祭壇、謁見の間より後ろは皇族やそれに並ぶ貴族の生活スペースとなっていた。その他に庭なんかもあったりするそうなのだが、これがとんでもなく広い。
ちなみに空によると、謁見の間より手前の建物内に、民間人が出入りできる所謂行政にまつわる仕事をする場所があるそうだ。私には難しくてよく分からないけど。
そして皇族の生活スペースをぐるりと囲む高い塀があるのだが、その周りに兵舎や兵士の訓練場、馬小屋などがあるらしい。
「ここ…、空のお気に入り…。」
そう紹介されたのは、回廊の一部だった。
「え、廊下?」
「…うん…。」
空は微笑みながら頷いた。その表情は、少し切なげだった。
(……。)
回廊には上り下りができないよう柵がついているのだが、曲がり角の手前だけ柵がない。
空はその柵がない場所に腰掛けた。つられて腰掛けて顔を上げると、目の前に立派な木があった。
「この木って…。」
「桜…。すごく綺麗…。」
「そっか…。」
だからここだけ柵がないのか。ここに腰掛けて桜を見上げることができるように、わざと柵をなくしたのだろう。よくよく見れば、柵を取り払ったような痕が柱に残っていた。
「私も、見たいな。」
「一緒に、見よ…。」
そう言う空に、少し困ってしまった。私はいずれ元の世界に帰らなければならない。それまでに桜が間に合えばいいが、それまで封印の方がもたないだろう。
「見れると、いいな。」
そう答えると、空は笑った。見た目に反して空は十分大人だ。全て承知の上だろう。
その次は空の部屋を案内してもらった。先程の回廊を奥へ進むと、そのまま空の部屋に繋がっていた。
空の部屋には普段の空からは想像ができないような豪華な品が所々に置かれていた。意外と華やかな物が好きなんだろうか。そんなことを考えながら、あまり人の物をジロジロと見るものではないとすぐに目を逸らした。
宮殿探検をしたいような気もするけれど、どこが入っていい場所なのかも分からないし、昨日気が付いたが、宮中は恐ろしく広い。1人で彷徨いたら絶対に戻って来れなくなる。
(そうだ、皇憐を誘えばいいのでは…!)
そう思いついてから、いやいやと首を振った。そもそも皇憐がどこに居るかも分からないんだった。ガックリと肩を落としたその時、部屋の扉が叩かれた。
「はい!」
姿勢を正して返事をすると、扉を開けて入って来たのは空だった。
「空! どうしたの?」
「結…暇…?」
「うん、すっごく暇! 何しようか考えてたところなの。」
そう言うと、空は顔を輝かせた。
「じゃあ、遊ぼ…。」
「いいの? お仕事は?」
見かけに騙されそうになるが、1000年以上生きている鬼である空は、宮廷内できちんとした職に就いている。
「お休み…。」
「そうなの? じゃあ遊ぼう〜!」
私は遊び相手をゲットして一気にテンションが上がった。空も嬉しそうに少し笑った。
「何かしたいことある?」
そう問うと、空は首を傾げた。
「じゃあ、宮殿を案内して欲しいな! 私1人だと迷子になっちゃいそうで…。」
「うん…。」
空は任せなさいという調子で顔の前で両手の拳を握った。何とも頼もしい限りだ。
それから空の案内で宮殿探検に出発した。
城門や祭壇、謁見の間より後ろは皇族やそれに並ぶ貴族の生活スペースとなっていた。その他に庭なんかもあったりするそうなのだが、これがとんでもなく広い。
ちなみに空によると、謁見の間より手前の建物内に、民間人が出入りできる所謂行政にまつわる仕事をする場所があるそうだ。私には難しくてよく分からないけど。
そして皇族の生活スペースをぐるりと囲む高い塀があるのだが、その周りに兵舎や兵士の訓練場、馬小屋などがあるらしい。
「ここ…、空のお気に入り…。」
そう紹介されたのは、回廊の一部だった。
「え、廊下?」
「…うん…。」
空は微笑みながら頷いた。その表情は、少し切なげだった。
(……。)
回廊には上り下りができないよう柵がついているのだが、曲がり角の手前だけ柵がない。
空はその柵がない場所に腰掛けた。つられて腰掛けて顔を上げると、目の前に立派な木があった。
「この木って…。」
「桜…。すごく綺麗…。」
「そっか…。」
だからここだけ柵がないのか。ここに腰掛けて桜を見上げることができるように、わざと柵をなくしたのだろう。よくよく見れば、柵を取り払ったような痕が柱に残っていた。
「私も、見たいな。」
「一緒に、見よ…。」
そう言う空に、少し困ってしまった。私はいずれ元の世界に帰らなければならない。それまでに桜が間に合えばいいが、それまで封印の方がもたないだろう。
「見れると、いいな。」
そう答えると、空は笑った。見た目に反して空は十分大人だ。全て承知の上だろう。
その次は空の部屋を案内してもらった。先程の回廊を奥へ進むと、そのまま空の部屋に繋がっていた。
空の部屋には普段の空からは想像ができないような豪華な品が所々に置かれていた。意外と華やかな物が好きなんだろうか。そんなことを考えながら、あまり人の物をジロジロと見るものではないとすぐに目を逸らした。



