そしてそれからしばらくして、秀明の仕事部屋に3人で居たとき。
「重大発表でーす!」
ノリノリの秀明は彼から財布を受け取ると、中から1枚のカードを取り出した。
「じゃーん。」
秀明が私に見せびらかしたのは、保険証だった。
「保険証がどうかしたの…?」
「よく見て! しかもこれ、社会保険なの! 被保険者は、皇憐!」
当時まだ大学生になりたてだった私には、その意味がさっぱり分からなかった。
首を傾げる私に、秀明は優しく笑った。
「保険証があるってことは、戸籍があるってこと。」
「あ…。」
そっか、皇憐は今まで『無戸籍』の状態だった。
「戸籍があるってことは、結婚できるってことだよ。」
「え…。」
「役所で婚姻届を出して、普通に結婚できる。」
「嘘…。」
「将来子どもが産まれたら、出生届に父親として名前も書ける。」
私は口元を手で覆うと、信じられなくて秀明と皇憐を交互に見た。
皇憐は優しく微笑んで頷いた。
「そして社会保険の保険証を持ってて、被保険者が本人ってことは、なんと! 職があるということです!」
「浮浪者だったみてぇな言い方すんな。」
「似たようなもんじゃない、住み込みの僕の専属アシスタントなんて。」
そう言って、笑い合った。
そして彼は名前を『皇憐』から『皇 憐』へと変えていた。
『秀明先生、今回賞を受賞されていかがですか!?』
気付けば、いつの間にか秀明が登壇してマイクを向けられていた。
壇上での落ち着きや話の上手さはやはり皇帝だった頃に鍛えられたものだろう。堂々たる話っぷりだ。
『そして最後に、『皇憐-koren-』に欠かせなかった僕の大切な2人に感謝を捧げます。』
そう言って、秀明は私たちを見た。私と彼……憐は、笑顔でそれに応えた。
降壇後、秀明は「上にホテル取ってあるから、よかったら泊まって行って」と言って私たちに鍵を渡した。
私たちはせっかくなので…と部屋へと向かった。
エレベーターを降り部屋の鍵を開けると、レディファーストを覚えた憐は、私を先に部屋の中へと入れた。
そして電気を付けて、私は息を飲んだ。淡いピンク色の花びらが部屋に敷き詰められていたのだ。まるで、桜林の桜の絨毯のように。
「憐っ…!」
後ろを振り返ると、憐は優しく微笑んで、小さな箱を抱えていた。
「結婚してくれ、結。」
ド定番に箱を開きながらそう言う憐に、私は泣いて抱き着いた。
憐は私を抱き留めると、そのままキスをした。
「返事は?」
そう問う憐に、私は涙を零しながら満面の笑みで返事をした。
「はいっ…。」
それから数年後、私たちは結婚し子どもを授かった。
私たちは今夫婦として、あの桜の中で願ったように、子どもの成長を側で一緒に見守っている。
「重大発表でーす!」
ノリノリの秀明は彼から財布を受け取ると、中から1枚のカードを取り出した。
「じゃーん。」
秀明が私に見せびらかしたのは、保険証だった。
「保険証がどうかしたの…?」
「よく見て! しかもこれ、社会保険なの! 被保険者は、皇憐!」
当時まだ大学生になりたてだった私には、その意味がさっぱり分からなかった。
首を傾げる私に、秀明は優しく笑った。
「保険証があるってことは、戸籍があるってこと。」
「あ…。」
そっか、皇憐は今まで『無戸籍』の状態だった。
「戸籍があるってことは、結婚できるってことだよ。」
「え…。」
「役所で婚姻届を出して、普通に結婚できる。」
「嘘…。」
「将来子どもが産まれたら、出生届に父親として名前も書ける。」
私は口元を手で覆うと、信じられなくて秀明と皇憐を交互に見た。
皇憐は優しく微笑んで頷いた。
「そして社会保険の保険証を持ってて、被保険者が本人ってことは、なんと! 職があるということです!」
「浮浪者だったみてぇな言い方すんな。」
「似たようなもんじゃない、住み込みの僕の専属アシスタントなんて。」
そう言って、笑い合った。
そして彼は名前を『皇憐』から『皇 憐』へと変えていた。
『秀明先生、今回賞を受賞されていかがですか!?』
気付けば、いつの間にか秀明が登壇してマイクを向けられていた。
壇上での落ち着きや話の上手さはやはり皇帝だった頃に鍛えられたものだろう。堂々たる話っぷりだ。
『そして最後に、『皇憐-koren-』に欠かせなかった僕の大切な2人に感謝を捧げます。』
そう言って、秀明は私たちを見た。私と彼……憐は、笑顔でそれに応えた。
降壇後、秀明は「上にホテル取ってあるから、よかったら泊まって行って」と言って私たちに鍵を渡した。
私たちはせっかくなので…と部屋へと向かった。
エレベーターを降り部屋の鍵を開けると、レディファーストを覚えた憐は、私を先に部屋の中へと入れた。
そして電気を付けて、私は息を飲んだ。淡いピンク色の花びらが部屋に敷き詰められていたのだ。まるで、桜林の桜の絨毯のように。
「憐っ…!」
後ろを振り返ると、憐は優しく微笑んで、小さな箱を抱えていた。
「結婚してくれ、結。」
ド定番に箱を開きながらそう言う憐に、私は泣いて抱き着いた。
憐は私を抱き留めると、そのままキスをした。
「返事は?」
そう問う憐に、私は涙を零しながら満面の笑みで返事をした。
「はいっ…。」
それから数年後、私たちは結婚し子どもを授かった。
私たちは今夫婦として、あの桜の中で願ったように、子どもの成長を側で一緒に見守っている。