月明かりに照らされた皇憐が美しくて、私はただその姿を見つめていた。
「向こうの世界でも、月は同じなのか?」
「え…、うん…。」
思わぬ質問に、思わず一瞬答えに詰まってしまった。
「そうか…。」
皇憐は月に向かって手を伸ばすと、そっと目を細めた。そして手を下ろすと、月を見つめたまま口を開いた。
その横顔は無表情なのに、いろいろな感情で溢れていた…。
「きっとこれから、お前は沢山の人間に出会うんだろうな…。」
ポツリと言われた言葉を一瞬理解できなかった。
「その中からまた誰かと…想いを通わせて、結婚して、子を授かるんだろうな…。」
「皇、憐…。」
「そして一緒に年を食って…、逝くんだろうな…。」
「皇憐っ…。」
私は包まっていた布団を跳ね除けると、転びそうになりながら皇憐に抱き付いた。
「…止めて…。」
「事実だろ…?」
「それでもっ…、今は…聞きたくない…。」
あの晩、私を残していくと決めたのは皇憐だった。そして今晩は、私が皇憐を残していくと決めた。
あの晩もこうして駄々をこねた。けれど今晩…私に、駄々をこねる権利なんてあるんだろうか。
皇憐は私に向き直って私を抱き締めると、「悪い」と謝った。
「少し虐めた。」
私は無言で首を横に振った。虐められたって、責められたって当然だ。
「少し、我が儘を言ってもいいか?」
「何?」
「“お前”の琴を聞きたい。」
「…うん。」
ここへ来る際皇憐が琴を持っていたので、そう言われるのは分かっていた。
私は琴の前に座ると、一音一音大切に奏でた。
『桜恋歌』。
私がまだ片想いだった頃、皇憐への想いを載せて作った曲だ。
いつの間にかこの曲は国中に知れ渡り、私が桜琳として存命だった時点で国歌レベルで有名な曲となっていた。
きっと皆が奏でていたことも一因だろう。
曲を奏で終わった瞬間、後ろから皇憐に抱きすくめられた。
「良い曲だ。やっぱり、“お前”が弾く『桜恋歌』が1番良いな…。」
「皇憐…。」
「“想い”がしっかり載ってるからだろうな…。」
そうクスリと笑った皇憐に、一気に顔が熱くなった。
勢い良く振り返って、皇憐の胸元を軽くバシバシと叩くと、皇憐は笑顔でそれを受けた。
「気付いてっ…!」
「俺はお前程鈍くねぇからな。」
「っ…!」
私はぐうの音も出なくて、叩く手を止めてそっぽを向いた。
「向こうで、他の男と…幸せになれよ。」
何を言われたのか分からなかった。ただ、涙が勝手に溢れ出した。
「俺は…月に結が幸せであるよう、毎晩祈る。だから…幸せになれ。」
皇憐に向き直ると、皇憐は悲しげに笑っていた。私は皇憐にしがみつくと、そのまま子どものように泣きじゃくった。
少し落ち着いてきた頃、あの晩のように、見つめ合って、キスを交わして、また抱き締め合って。
私たちは桜の絨毯の上、そのまま一晩を過ごした。
やはり皇憐は、最後まで泣かなかった。
「向こうの世界でも、月は同じなのか?」
「え…、うん…。」
思わぬ質問に、思わず一瞬答えに詰まってしまった。
「そうか…。」
皇憐は月に向かって手を伸ばすと、そっと目を細めた。そして手を下ろすと、月を見つめたまま口を開いた。
その横顔は無表情なのに、いろいろな感情で溢れていた…。
「きっとこれから、お前は沢山の人間に出会うんだろうな…。」
ポツリと言われた言葉を一瞬理解できなかった。
「その中からまた誰かと…想いを通わせて、結婚して、子を授かるんだろうな…。」
「皇、憐…。」
「そして一緒に年を食って…、逝くんだろうな…。」
「皇憐っ…。」
私は包まっていた布団を跳ね除けると、転びそうになりながら皇憐に抱き付いた。
「…止めて…。」
「事実だろ…?」
「それでもっ…、今は…聞きたくない…。」
あの晩、私を残していくと決めたのは皇憐だった。そして今晩は、私が皇憐を残していくと決めた。
あの晩もこうして駄々をこねた。けれど今晩…私に、駄々をこねる権利なんてあるんだろうか。
皇憐は私に向き直って私を抱き締めると、「悪い」と謝った。
「少し虐めた。」
私は無言で首を横に振った。虐められたって、責められたって当然だ。
「少し、我が儘を言ってもいいか?」
「何?」
「“お前”の琴を聞きたい。」
「…うん。」
ここへ来る際皇憐が琴を持っていたので、そう言われるのは分かっていた。
私は琴の前に座ると、一音一音大切に奏でた。
『桜恋歌』。
私がまだ片想いだった頃、皇憐への想いを載せて作った曲だ。
いつの間にかこの曲は国中に知れ渡り、私が桜琳として存命だった時点で国歌レベルで有名な曲となっていた。
きっと皆が奏でていたことも一因だろう。
曲を奏で終わった瞬間、後ろから皇憐に抱きすくめられた。
「良い曲だ。やっぱり、“お前”が弾く『桜恋歌』が1番良いな…。」
「皇憐…。」
「“想い”がしっかり載ってるからだろうな…。」
そうクスリと笑った皇憐に、一気に顔が熱くなった。
勢い良く振り返って、皇憐の胸元を軽くバシバシと叩くと、皇憐は笑顔でそれを受けた。
「気付いてっ…!」
「俺はお前程鈍くねぇからな。」
「っ…!」
私はぐうの音も出なくて、叩く手を止めてそっぽを向いた。
「向こうで、他の男と…幸せになれよ。」
何を言われたのか分からなかった。ただ、涙が勝手に溢れ出した。
「俺は…月に結が幸せであるよう、毎晩祈る。だから…幸せになれ。」
皇憐に向き直ると、皇憐は悲しげに笑っていた。私は皇憐にしがみつくと、そのまま子どものように泣きじゃくった。
少し落ち着いてきた頃、あの晩のように、見つめ合って、キスを交わして、また抱き締め合って。
私たちは桜の絨毯の上、そのまま一晩を過ごした。
やはり皇憐は、最後まで泣かなかった。



