龍は千年、桜の花を待ちわびる

「えっ、水晶の力…使えないの?」


夕食で皆が集まった際に、私はびっくりして少し大きな声を出してしまった。

そんな私に苦笑しながら、秀明は頷いた。


「元々あれは怨念に適応した皆だったから使えた力であって、ただの人間には使えないからね。」
「そっか…。」


ということは、旅の途中で私が欲しいと言ったとき、禿げるからと皇憐に拒否されたけど、そもそも持っていても意味はなかったということか。


「でも、空…外さない…。」


空は顔の周りの髪をまとめている水晶を握り締めると、少し寂しそうに俯いた。

それを見て、皇憐は空の頭に手を乗せた。


「安心しろ。水晶が消えたりすることはねぇから。」


そう言われて、空は嬉しそうに顔を輝かせた。


「私も外さぬ。これはもう、私の一部だ。」
「この1000年、沢山贅沢したつもりだけど、やっぱり1番の宝ってのはこういう物をいうんだろうね。」


水凪と木通もそう言って、自分たちの水晶に触れた。金言と焔も同様に水晶に触れると、柔らかく笑っていた。

空の髪留め。
水凪のブレスレット。
金言のアンクレット。
焔の首飾り。
木通の耳飾り。


「俺には加護の力もあるらしい。お前らが力を使うことはできなくなっても、俺の加護は生きてるはずだ。付けとけ付けとけ。」


そう言って、皇憐も笑った。

そうか。街の守り神ではなくなってしまったとなると、鬼たちの今後のフォローは必須だ。秀明はそこまできちんと分かっていたから、早急に権力を手に入れたのか。


「皆は今後はどうするの?」


秀明によると、皇帝と皇后は、皆に宮殿内の各々の部屋に住まう許可をくれているようだ。


「俺は自分の家に戻る。皆の墓もある。」
「空…このままここに居る…。」


この焔と空に関しては聞かずとも分かっていた。特に空は皇太子と恋仲だと言うし、宮中での役職もある。


「私たちは東の街に住まおうと思う。」
「あそこは気候も良いし、首都にも近いからね。」
「そっかそっか。」


守り神でなくなったことは、マイナスだけではない。今まで土地を離れられず、一緒に暮らせなかった鬼同士が一緒に暮らせるというプラス要素がある。

そのことに、2人の言葉を聞いて気が付いた。


「俺は、国中を旅するんだ!」


ガサガサの声でそう宣言した金言は、声変わりのせいで声を出しにくそうだった。

最初は突然のことに困惑していたが、声変わりだと気付いてからは大人になれる喜びの方が勝っているようだった。


「もっと、いろんな物を見るんだ!」


そう宣言した金言に、思わず笑みが溢れた。