龍は千年、桜の花を待ちわびる

それから、約1ヶ月。

暇な日々が続くと思っていたのに、少し慌ただしい日々が私たちを待っていた。


秀明は皇帝・皇后だけでなく重役にまで正体を明かすと、皇帝と同等かそれ以上の権力を手にした。


「そんな権力、どうするの?」


秀明が権力を悪用するとは思えないが、今更私たちが手出しをするのも良いことだとは思えなかった。

そんな私を安心させるように微笑むと、秀明は言った。


「“彼ら”はもう鬼じゃなくなってしまった。今後のことまで精一杯のフォローするのも、僕の役割だと思わない?」
「あ…、そっか…。」
「この国に居る間に、怨念関連の資料も残したいし、組織の人間に怨念の祓い方の指導もしておかないと。」


秀明は秀明のままだった。

怨念は私の手出し出来る領域ではないので、そのまま基本は秀明に託し、私は必要に応じて事務方の手伝いをすることにした。


焔は1度南の街へと戻ると、例の彼女を連れて帰って来た。


「結婚の証人になってくれ、結。」
「えぇ! 私、もう『桜琳』じゃないんだよ?」
「それでも。“お前”に頼みたい。」


そう凛とした笑顔で言われてしまっては、断ることもできず。私は彼らの結婚の証人となり、焔は無事結婚を果たした。


その後妻となった彼女を街へ送り届けて再び宮殿へ戻ると言うので、私と皇憐、秀明も同行することにした。


といっても、時間は限られている。

私は1000年ぶりに、龍の姿となった皇憐に乗せてもらった。飛ぶには真冬の寒さは厳しかったが、時は金なり。特に秀明はすでに多忙の身だったので、やむおえなかったのだ。


私たちは街外れの人気がない所で皇憐に降ろしてもらうと、皇憐は人の姿に戻った。


焔の家に入ると、中に1人の女性が居た。その女性こそが、『彩雲の好い人』だった。

彼女は焔に渡す物があり、ずっと待っていたのだと言う。彼女は焔にそれを渡すと、静かに去って行った。


焔はそっと包みを開くと、悲しそうに笑った。

包みの中身は、“彩雲”だった。死後、彼は灰になったのだと彼女は言っていた。


私たちは彩雲を焔の家の庭に埋葬すると、焔の妻となった女性を焔の家に残し、宮殿へと帰還した。


「よかったの? 結婚したばかりなのに…。」
「いい。これから…何十年もずっと一緒に居られる。」
「そっか。」


ちなみに道中、2人…というか、焔の愛情表現を見せつけられたのは言うまでもなく。

皇憐は宮殿に戻ってから、「何度か振り落としてやろうかと思った」と吐き捨てるように言った程だった。


その後も水凪と木通の結婚の証人になったり、私も暇ばかりではなかった。