「歩けるか?」

「うん!」

点滴が終わり、家に帰ろうとするが

「おっと……」

ベッドから立ち上がろうとした女は今にもずっ倒れそうでフラフラと俺の胸に飛び込んできた。

無理か…

「ごめんねっ、よいしょっ……」

慌てて俺から離れ自分1人の力でなんとか歩き出そうとする女に俺は背を向けた。

「ほら、乗れ」

「おんぶ?」

「あぁ。」

…別に気まぐれ。

仕方ないからこうしてやろうと思っただけだ。

「やっぱり優しい!」

「はぁ!?違うし!別にお前の事なんかおぶりたくねぇし!いやいやだし!渋々だし!」

「わーい」

「おい、人の話聞いて……」

また話してる途中なのに、女がひょいっと俺の背に体重を預けてきた。

そして首に腕を絡ませてくる。

「ぎゅーっ!」

「あ、おい!首しまるだろ!」

軽く怒鳴ると、腕の力は弱められ、「ずーっと一緒!」という声が耳元で聞こえた。

かと思ったら

ーーカプ…

俺の耳たぶを咥えて甘噛みしだした。

「あ、こら!耳たぶ噛むな!」

ーーカミカミ…

寄生虫みたいだ。

「やめろ!もう!」