課長のケーキは甘い包囲網


 私はとりあえず一旦課長の家に行かないと許してもらえないと悟った。スーツケースに数日分の服を詰め込み、手洗い場から色々持ってきた。化粧品にパソコン、充電器、ブツブツ言いながら詰めていく。

 気がつくとコーヒーの香りがしている。課長は勝手にコーヒーを入れて飲みながらこちらをじっと見ている。

 とりあえず、ぎゅうぎゅうに無理矢理急いで服を詰め込んだ。バタンという音を立ててスーツケースの蓋をする。何とか終わった。

 すると、課長が近づいて来た。ミルク入りのコーヒーを手渡してくれる。びっくりした。

「お前、ミルクだけだろ?俺と一緒だな」

「どうして知ってるんですか?」

「それはまあ、会社で……」

「うそですよ。だって、課長私が作っているところ見たことないじゃないですか」

「……まあ、俺は何でも知ってるんだよ。お前と違って注意深いんだ」