課長のケーキは甘い包囲網


「……はあ、またやったのね。近寄らない方がいい。巻き込まれる」

「でもどうして……あの課長があんなふうになるなんて、何があったんですか?」

「いいから、早く仕事に戻りなさい」

 聞くなという雰囲気があり、私はびっくりした。でもしょうがない、コップを洗い仕事へ戻った。

 三十分もした頃、篠田課長が出てきて、ドアを勢いよく閉めると驚いてそちらを見たみんなを無視して出て行った。

 部長が立ち上がり、中に入った。沢島課長と話をしている。

 そう言えば思い出した。課長はよく昼休み、窓から外を見ている。

 いつも同じ方向を向いて見ているので何を見ているんですかと聞いたことがある。すると、工場のほうを指さして、あっちに何があるか知ってるかと聞かれた。

 その頃はよく知らなくて、工場ですか?と聞いたら寂しそうに笑っていた。あれは工場ではなくて、横にある商品開発課だということが後でわかった。