課長は私に家へ来いと言いながら、結局二週間そのままだった。課長自身があれから出張などもあって、ほとんど席にいないし、顔を合わせることがなくなっていたからだ。

 課長が二週間ぶりに地方から戻ってきたときには、すっかりその話はなくなったものだと思っていた。すると、廊下ですれ違いざまに腕を引っ張られて、打ち合わせ室へ放り込まれた。

「おい。夜遅く帰ってないか?あんまり遅くなるなよ。今週末には約束を果たせそうだから、自分で荷物まとめておけ。いいな?」

「そのことですけど、自分で部屋を捜そうと思いますので、大丈夫です。本気で考えてますから、せっかくのおやすみは課長自分のために使って下さい」

「何勝手に約束をなかったことにしようとしているんだ。俺は昨日、一応空き部屋を掃除までしたんだぞ。机と椅子まで入れてやった。この労力どうしてくれる」

 ええ?そんなことまで頼んでないよ……。ちろりと上目遣いに見たら、じろりと睨まれた。怖い。

「だから、自分で新しいアパートを捜します。そして頑張って早めに引っ越します。何より、課長だって連れ込む女性がこれからいるかもしれないし、私がいるとハッキリ言って色々迷惑でしょう?」

「……お前、連れ込むって、しかも、これからって何なんだ。突っ込みどころ満載だな」