課長のケーキは甘い包囲網


「そうか、意地で頑張ったんだな」

「まあ、そういうことです」

「理由はどうあれ、やり抜いたのはすごいな。最初は誰でも何かしらやらかすもんだ。お前のいいところは笑顔と明るさと根性だ。落ち込みすぎてそれをなくすなよ」

 課長がその時私に向けてくれた優しい瞳を、その日以降忘れることはなかった。それくらい、優しい目だった。

「……課長。優しいですね。私、涙が出そうです」

「そうだろ。俺は鬼と呼ばれているが、ほんとは優しいんだよ。でも俺に関わる仕事で何かやらかしてみろ、鬼になるからな。覚悟しろよ」

「ええー?慰めた側からそれですか……はあ」

 すると、課長は言った。

「まあ、俺とやる仕事の時はキチンと見張っていてやる。あまり構えずにお前らしくいろ。また、えくぼ付きの笑顔を見せてくれ」

 私はびっくりして課長の顔を見上げた。