彼の誕生日は四月二十三日。私はそのひと月後の五月二十五日。

 最近は暑くなるのも早くてすみれの季節が少しずれている。

 約束通り、彼の誕生日に料理を作ろうと思っている。でもケーキは自分で作らない。

 正確には作れないの間違いだが、彼の本業だから、私は手を出さない。

 私は彼が認めるケーキは何なんだろうと考えた。うちの店のケーキなんて芸がなさ過ぎる。

 かといって、有名店のケーキも実際は美味しいのかどうかさえよくわからない。

 それで、彼の認めるケーキがいいと思いついて、ツインスターホテルへ彼女の作ったケーキを買いに行こうと決めた。

 そして、彼女のケーキを予約して、出来ることなら一度彼女に会ってみたいと思っていた。

 元カノにわざわざ会うなんて馬鹿みたいだが、それにも少し理由がある。

 彼は最初店のお客さんだった。次は上司。次は師匠。そして恋人。

 だが、何というか……最初から彼のペースで私はついていくばかり。