課長のケーキは甘い包囲網


「ふーん。お父さんも隠さずに何でも相談してくれると助かるんだけれど、な」

「……確かにそうですね」

 私は料亭の経営がどういう状態なのかについては全く知らなかった。でもそれで済む問題じゃないような気がする。相変わらず、私は自分の浅はかさに情けなくなってきた。彼はしばらく考えていたのか黙っていたが、ようやく口を開いた。

「もしかすると、俺と話した方がいいかもしれない。すみれにお父さんは料亭の経営状態とか本当のことを言いづらいかもしれないからな。先に俺が話してみよう。お前に彼が会いに来た事も話す」

「それはダメです。私のことだから私が話します!もう、人任せにするのはいけないと反省しました」

「よし、わかった。一緒に話そう」

 そして、一時間後。

 私からお父さんに電話をして坂田先輩が会いに来たことを話した。すると、突然お父さんが謝ってきた。家や会社の住所を教えたからだ。条件のはなしも聞いたが、それは保留になっていたらしい。