課長のケーキは甘い包囲網


「それはどうでしょう?最初の頃のことを考えたらあり得ません。父も誰の子だとか言ってたし……」

「……」

「そうだ、お父さんですよ、電話しなくちゃ」

「ちょっと待て。まだ営業中だろ。まず先に、俺にその縁談相手のことを説明しろ」

「えっと、その人は高校の図書委員会の役員で一緒だった先輩です。坂田長野ホテルの御曹司なんですけど、昔は大人しいイメージだったのに、久しぶりに再会したら、だいぶ口が達者になってました」

「ぷっ!お前、いい大人捕まえて口が達者になってましたって当たり前だろ。子供じゃあるまいし。仕事してたらそうなるだろう」

 そう言えばそうかな?いや、だいぶ口が悪くなっていたの間違い?私が目を白黒して考えているのを誠司さんはおかしそうに見てる。

「それで?説明してもお前を諦めないということは、高校時代からお前が好きだったんだな。告白されたのか?当時はつきあっていなかったのか?」