課長のケーキは甘い包囲網


「わかりました。じゃあ、あとで」

「ああ」

 私は、結局そのままUターンしてマンションへ戻った。

 夜になり、彼が帰ってきた。今日も私が食事を作った。豚の生姜焼き。レシピを見ながら作ったが、美味しく出来た。

「うん、うまい。お前、レシピを見れば何でも出来ると思ったらまだまだだぞ。魚とかあんまり作ってないだろ。煮魚とか作ってないからな」

「確かにそうですけど、どうも料亭で出しそうなものって作りたくないんですよね。でも色々やらないとですね」

「いや、別に義務はないけどな。手がかかるのは週末とか一緒にやってもいいし……」

「でも、最近私包丁使うのも怖くなくなってきたし、何をどのくらい入れるとどういう味になるとか、そういうことも大分わかってきました。だから料理が最近とても楽しくて……」

 彼は私を見て微笑んだ。

「生徒が上達するのは嬉しいな。それに、お前はやはり料理人の血が混ざっている気もする。料理の勘がいいから、味の配分がすぐに出来るんだろう」