課長のケーキは甘い包囲網


 あっけにとられたお父さんを横目に、お兄ちゃんが挨拶した。

「沢島さん、すみれからこの間上京したときに少し話は聞いてます。あ、この間の冷蔵庫の食材、料理してもらえましたか?」

「あ、とても美味しかったです。山菜のあく抜きしたものも、美味しく頂きましたし、色々ありがとうございました」

「美味しかったよ、お兄ちゃん。ありがとう」

「やっぱりあなたに料理してもらったんですね?」

「いや、彼女も手伝いましたよ。最近できるようになりました」

「そうですか。いや、会社でも上司で、プライベートで料理も教えてもらうとか、こんな妹ですがよろしくお願いします」

「……ちょっと待て。何を勝手にこいつにすみれをお願いしてるんだ」

 ようやく目の前に腰を下ろそうとしたところで、お父さんが立ち上がって、仁王立ちした。

 私達は固まってしまった。