課長のケーキは甘い包囲網


 大きな声がする。私はびっくりして立ち上がって玄関を覗いた。

「すみれ。来ちゃったよ」

「……は?ええ!?仕事は?」

「ああ、三時頃直帰すると言って出てきた。すみません、突然伺って……宿は予約してますので、ご心配なく。あ、これはうちの菓子です。良かったらどうぞ」

「あ、お気遣いすみません。どうぞ、どうぞ、お上がり下さい。ちょうどいいところにいらっしゃいました。あなたの恋人は今窮地に陥っていましたよ。で、えっと、お名前は?」

「あ、すみません。沢島誠司と申します。よろしくお願いします」

 私は彼の鞄を受け取って、スリッパを出した。

「沢島さん。娘がお世話になってありがとうございます。とても格好いいわ。良かったわね、すみれ」

「「は?え?」」