私は深呼吸をして、お父さんに話し出した。
「会社の上司です。十歳年上です。とても格好よくて頼りがいのある人です」
「そんな人がどうしてすみれと?」
お父さん、ひどい。
「お前は、料理は出来ない、家事はできない、出来るのは勉強くらいだったが、もしやだまされたのか?」
「だまされてないもん!」
「じゃあ、どうして付き合ってる?」
「えっと……そんなことはどうでもいいです。とにかく、彼も私がいいと言ってくれているし、結婚前提でお付き合いしています。だから、先輩との縁談はなかったことにして下さい。お願いします」
私はお父さんに頭を下げた。お兄ちゃんが口を開いた。



