「あら、勝俊早かったわね」
「すみれは?」
「帰ってるわよ。居間にお父さんといる」
私は借りてきた猫のように小さくなって大きなつげのテーブルの隅っこに座っていた。お父さんは正面のど真ん中にいつもの定位置にどっかり座って私の事なんて知らぬフリ。だって、何を言いに来たかわかっているんだと思う。
「お父さん、帰りました」
「ああ、おかえり。そこに座れ。夕飯は?」
「食べてないよ。久しぶりに母ちゃんの作ったものが食べたい」
「珍しいことを言うな」
すると、お母さんが入ってきた。
「失礼ね。珍しくなんかないわよ。勝俊はあなたと違って私が作ったものに文句いったりしませんからね」



