課長のケーキは甘い包囲網


「何を言ってるんだよ。大体、そんな話一切しないで、菓子の相談で俺を呼び出しておいて、これはないだろ?」

「まあ、そうね。でもそうとでも言わないとあなた帰ってこないもの……」

 まあ、確かにそうだな。

「わかりました。じゃあ、とりあえず出品の商品リストですけど、こんな感じでどうかしら?」

 さすが母さん。手際がいい。俺はリストにある十品目を見て、言った。

「とりあえず、預からせてくれ。開発課へ戻ってから色々確認して、それから検討するよ」

「ねえ、誠司」

「ん?」

「パティシエに戻る覚悟あるの?うちのことで無理矢理なら断っていいのよ」

 お見通しだったか。