課長のケーキは甘い包囲網


 どうして急にそんなことを聞くのかと思ったが、父がそういうことを企む性格には思えなかったのでスルーしてしまった。それがまずかった。

 木村さんは従順そうでいて仕事ができるとなれば、母のお眼鏡にかなったんだろう。

 乗り気なのも見ていればわかる。だが、無理だ。

 俺はすでにすみれと同棲していて、向こうの親にもキチンと挨拶して同棲を許してもらおうと思っている。

 いや、同棲させてくれと言って頷く親などいない。やはり、結婚前提でと話さない限り、大切な一人娘と暮らすことを許したりしないだろう。

 とにかく、俺はすみれ以外を全く考えていないので、母さんの問題は後で何とかするとしよう。

 木村さんには、お詫びしてお帰り頂いた。母さんはまだ来ない。

 俺は父さんにメールして事の次第を伝えた。そして、結婚を考えている女性と同棲していると伝えた。